2020年 12月 の投稿一覧

1/9 論争の書 ―『人新世の「資本論」』を読む(オンライン開催)

次回は現代を生きる私たちに提言された思想に関する本の内容をご紹介します。

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経済思想、社会思想が専門の斎藤幸平氏が2020年9月に『人新世の「資本論」』を発表しました。
斎藤氏は、ドイツのベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程を修了し、ドイツの経済学者・哲学者・革命家のカール・マルクスについて論じた『大洪水の前に』(邦題)を世界5カ国で発表して、1987年生まれにして大阪市立大学大学院准教授という俊英です。
出版元の集英社のウェブページによると、既に5刷を記録しています。
斎藤氏は本書で、現代を、人類の経済活動が地球環境を破壊する「人新世」(ひとしんせい=「じんしんせい」とも読める)と捉え、われわれは環境危機の原因である経済成長を追求する資本主義を排撃し、経済活動を鈍化させる「脱成長コミュニズム」(「コミュニズム」は一般に共産主義と訳する)に転換するべきだ、と主張します。
論争の書です。
今回の三文会では、「コミュニズム」を批判する古典にも目を配りながら、『人新世の「資本論」』の内容を紹介します。

●キーワード:人新世、資本論、カール・マルクス、気候変動

●文献:
斎藤幸平, 2020,『人新世の「資本論」』集英社.

【一分間スピーチのテーマ】
地球環境保護のために実践していることはありますか?

【発表者】
熱川豊紘(にえかわ・とよひろ)
1986年和歌山県生まれ。東京大学文学部を経て、2012年に同大学大学院学際情報学府修士課程を修了。専門は科学・技術政策論。在学中、財団法人東京大学新聞社(現、公益財団法人)に勤務。朝食勉強会、三文会事務局に出向。現在、情報通信企業でマーケティングを担当。

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12/26【歴史に残る植物の病気】

次回の三文会では、植物の病気について、現役の植物研究者の方が発表します。

ー以下発表者の方の告知文ですー

「コロナ」という単語を耳にしない日はない日常を皆さんはどうお過ごしですか?
100年前のスペイン風邪が世界史の教科書に記載されているように
新型コロナウイルス感染症COVID-19も未来の世界史の教科書に記載されることでしょう。
ところで植物も感染症にかかります。その中には甚大な被害を引き起こし、文明崩壊の引き金になったと言われている症例もあります。
今回はそんな病害を紹介します。

【一分間スピーチのテーマ】
植物も病気になることを知っていますか?見たことがありますか?

【発表者】
本間洋平(ほんまようへい)
平成27年東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。
専門は植物生理学、植物病理学、植物細胞工学、園芸学。
博士課程修了後は公益財団法人の研究機関で野菜の品種改良の研究職に就いています。

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12/19【2021年の手帳を使い始めるときに ―隠れた名著?『能率手帳の流儀』を読む】(オンライン開催)

次回は手帳について。「手帳で人生を変える」という本も多い中、「人生を計画することなどできない」と説いた本について発表します。

ー以下発表者の告知文ですー

私は2008年から、日本能率協会マネジメントセンターの1月始まりの手帳を、2021年分を含めて14年間、愛用しています。
きっかけとなったのが、同社代表取締役会長だった野口晴巳氏による『能率手帳の流儀』(2007)でした。
平易な手帳の使い方を、
「能率手帳に限らず、どこの手帳だっていいのです」
「人生を計画することなどできない」
と、手帳を販売している会社の経営者とは思えない調子で説く内容でした。
日頃、自己啓発本をほとんど読まない私でも、手帳で「夢をかなえる」「人生が変わる」と主張する書籍とは一線を画する語り口に思わず納得してしまいました。
失礼ながら当時、書店で立ち読みしたまま購入しないでいましたが、最近ふと思い立って探したところ、運よく良心価格(それでも定価の約1.5倍)の古書が入手できました。
現在、通信販売大手アマゾンジャパンの中古品を見ると、定価1400円のところ、古書の価格が最低でも5000円を超えるまで高騰しており、隠れた名著といえるかもしれません。
せっかくなので、今回の三文会では、この『能率手帳の流儀』の内容を紹介します。
電子機器で予定や日記を管理されている方を含め、2021年の手帳を使い始めるときの一助になれば幸いです。
(お詫び)先週12月12日土曜日の三文会で、斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』(2020/ 集英社)を紹介すると申しましたが、業務の都合で延期とさせていただきます。同書についても、2021年の早い段階で話題提供とさせていただきたく存じます。

●キーワード:手帳、NOLTY、能率手帳

●文献:
野口晴巳, 2007,『能率手帳の流儀――みずからの成長と人生の豊かさを求めて』日本能率協会マネジメントセンター.

【一分間スピーチのテーマ】
手帳を使っていますか? 使っているとしたら、どのように使っていますか?

【発表者】
熱川豊紘(にえかわ・とよひろ)
1986年和歌山県生まれ。東京大学文学部を経て、2012年に同大学大学院学際情報学府修士課程を修了。専門は科学・技術政策論。在学中、財団法人東京大学新聞社(現、公益財団法人)に勤務。朝食勉強会、三文会事務局に出向。現在、情報通信企業でマーケティングを担当。

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12/12【改造車という文化】オンライン開催

次回は改造車について。ちょっと怖い印象ですが、運転好きではない発表者から文化的な側面について伺います。

ー以下発表者の告知文ですー

「改造車」と聞いて何を思い浮かべますか?
派手な形のうるさい車?暴走族?走り屋?あるいは映画「ワイルドスピード」シリーズを挙げる方もいるでしょうか。
クルマ趣味として、たとえば洗車してドライブしたりクラシックカーを愛でたりすることはまだ理解できても、改造するとなると眉をひそめる方が多いかもしれません。
しかし、市販車そのままでは満足できず、改造によるチューンアップ(走行性能向上)やドレスアップ(外観の変更)に情熱を注ぐ人達が世界中に存在します。
日本においては、改造車が事実上全て違法だった1970年代から独自の発展を遂げ、この数十年で海外からも注目されるようになりました。昨今では国内外の自動車メーカーの商品企画にまで影響を与えています。
改造車は反社会性や違法性と切り離せないのも事実ですが、改造車のジャンルや独特の嗜好とその変遷を通じて、そこに文化と呼べるものが存在していることを紹介したいと思います。

【1分間スピーチのテーマ】
「改造」という言葉から受ける印象。(クルマでもそれ以外でも)

【発表者紹介】
企業の研究所で機械系の研究開発に従事する研究者。
クルマの持つ文化的な側面が好き。運転は怖いのであまり好きではない。

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12/5【「人工細胞」研究の最前線】オンライン開催

今週は「人工細胞」について。
まさに物理と化学と生物との融合したような領域です。幅広く興味のある方、ぜひお越しください!

ーー以下発表者の告知文ですーー

■生物学のテキストは細胞から始まります。それ以前のことはほとんど書かれていません。細胞は「生きて」いますが、それを作るものは「分子」という「物質」です。それでは、「生命」というのは、細胞の前駆体のどの段階で発生するのでしょう?その起源研究はオパーリンのコアセルベート説(1924年)、ミラーの放電実験(1953年)などの先駆的な(『夢』のような)問題提起がありましたが、20世紀中は現実の細胞までつながっていませんでした。
しかし最近はそこをつなげる努力が有機化学に物理学の手法を取り込んだ有機反応動力学で展開されています。その最前線を紹介します。

まず、生体を作るに必要な素材分子を油滴にどんどん溶かして増やします。これでは単に材料集団です。そこで、ここへ膜を作る膜形成前駆体を打ち込みます。それによって細長い分子で頭に親水基、尾に疎水基を持つ両親媒性分子[1]を二重に並べて境界とした球に近い袋状の構造が出来ます。生体分子を内部に持ち「自己」と外部と識別するうつわ(ベシクル)です。今度はそこへ、自己増殖を促す触媒を注入して分裂させます。それが、2世代目だけでなく3世代まで成功しています。分裂挙動は動力学でもあります[2]。このようにして以降継続的に起こさせる道が開けました。これにより最前線の研究では、細胞の基本機能である「自己」と他の識別、分裂による継続的自己増殖、代謝系の確立がそろった「進化する」うつわ系としての「人工細胞」へと進展しつつあります[3]。細胞の前駆体としての「生命試作号」創刊前の「予告版」というあたりでしょうか?

●文献
[1]夏目雄平『やさしい化学物理~化学と物理の境界をめぐる』《朝倉書店》。
[2]夏目雄平『やさしく物理~力・熱・電気・光・波』《朝倉書店》。
[3]松尾宗征、栗原顕輔 “生命起源と人工細胞” 、現代化学2020年増刊号46、白石賢太郎編『相分離生物学の全貌』《東京化学同人》。

●キーワード
オパーリン、コアセルベート、油滴、液液相分離、両親媒性分子、リポソーム、ベシクル、細胞分裂、代謝、進化

【1分間スピーチのテーマ】
世界を「生命を持つもの」と「生命を持たないもの」に分けるとしたら境目はどこだと考えますか?

【発表者紹介】
夏目雄平(なつめ・ゆうへい)
1946年長野県生まれ。東京大学理学部物理学科卒、同理学系大学院で理学博士の学位を得る。イギリスで研究活動の後、千葉大学理学部へ助手(助教)として就職。1990年教授となり、定年の2012年まで勤務。その後は、科目の境界を越えて、科学を一般に広める活動、科学の本の執筆に従事している。
専門書(文献の1,2および『計算物理』シリーズ《朝倉書店》なと)、一般科学書(11月刊行本に『身近な科学が人に教えられるほどよくわかる本』左巻健男編《ソフトバンククリエイティブ》、12月刊行本に『はじまりから知ると面白い物理学』左巻健男編《山と渓谷社》がある)の他、文系の本として(鉄道、徒歩の)旅の本(『小さい駅の小さな旅案内』《洋泉社新書》など)も出版している。ふるさとNAGANO応援団メンバー。活動、夏季は男子もスカートをはこう。

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